未踏作業日誌――余計なもの作るよ!

未踏の作業日誌的なものを書きましょうということで書くことにしました.余計なことばっかりしています.

産業と学術の両方の視点を持つことについて

Twitterでなぜかゲーム開発がトレンド入りした.なんだろうと思ったら,どうやらCEDECの記事とゲーム専門学校の記事がRTされまくっているらしい.どちらも個人的にモヤッと来るものがあり,うーんなんだかなぁと思った.

 

専門学校のほうは,割りと頑張っている学生さんを何人か知っていて,だいたいそういう人はちゃんと就職できている.たぶん,どうしてもやる気でない勢がどんなものか実感がわかないのかもしれない.でも,うちの大学でもそういう人いるけど,少なくとも共同制作の経験は1回ぐらいあるしなぁ.企画志望で何もやってない人は幸いながら(?)一度もお目にかかったことがない.

なので,現実的な問題として,記事の内容が本当にそんな奴がゲーム会社の面接までたどり着けるんかいと思ってしまった.そもそも,ゲーム会社はポートフォリオを要求してくるので,作品がないのに面接まで上がれるのは,たぶん内部的な何かがあったとかそういうのがあるのかもしれない.少なくとも,誰しもが作品を作る世界なので,本当に何も作ってない人がいるのかわからない.ポートフォリオを偽造して潜り込んでくるアホの話はよく聞く.何もできない人でもポートフォリオは偽造するので,作品は必須なもんだと思っていた.作らない人もいるのかな? ということでモヤモヤしていた.

 

もう一つモヤモヤしたのは,遠藤さんと馬場さんと簗瀬さんの記事だった.CEDECは足の不調でエキスポパスで挨拶する程度だったので,本体のセッションには参加していなかった.なので,本当はどんなことを言っているのかはファミ通やYahooニュースなどの記事でしか知らない.

既視感については凄くあるあるネタで,タイトルだけ読んでも「ここ最近だとスクフェスが1年半ぐらいかけて育てたDL数を1週間で塗り替えて凄いよね,ここまでコンテンツ育てると,類似コンテンツに波及するからヤバイよね」と思ってしまう程度にあるある.

内容自体は普通だし,記事で得られる知見を要約すると,「やっぱりオリジナルをやりたい」という話で,残りは今までの知見を共通の言葉で説明している風だった.ただ,読んでいて一番モヤモヤしたのが以下の一節.

また、学会でもゲームには思い出補正があるという議論がたびたび行われるそうで、高校生までに遊んだゲームがいちばん だという人が56%も存在。となると、ゲームは昔のものに勝てないということになるが、20代前半にプレイしたゲームがいちばんという女性が多い事実も発 覚。これは思い出補正ではなく、半数の人が設定や世界観、キャラクターに惹かれているというデータが出ている。よって、設定や世界観、キャラクターといっ た要素は、思い出補正を打ち破れる力を持っている、と述べた。

【CEDEC 2015】ゲーム開発における既視感は“悪”なのか? [ファミ通app]

揚げ足を取るわけではないけれども,現在のゲームより高校までに遊んだゲームのほうが面白いと答えたのが約半数だとして,「設定や世界観,キャラクターなどの要素が思い出補正を打ち破れる」という結論に至るのは,定量的な観点から見て話が飛躍していてよくわからない.もしかすると,記事が要約し過ぎて意味不明になっているだけかもしれない.

 

まず,仮に約56%の人が現在のゲームより,過去のゲームが面白いと答えている.残りの半分は現在のゲームが面白いと答えている人がいる.よって,思い出補正を打ち破れるという結論になっている.

しかし,これは主語が抜けていて,(過去のゲームが面白いと答えている人の)思い出補正を打ち破れる,という結論に取れなくもない.いや,(現在のゲームが面白いと答えている人の)ことかもしれない.この記事の主語がないのでどちらとも取れる.

前者だとかなり具合が悪い.と言うのも,この記事の中では,具体的に過去のゲームが面白い人の思い出補正を打ち破った方法について書いていない.ましてや,その論拠を現在のゲームが面白い人がいたから,と結論付けるのは,あくまでそういう人がいたから,そういう結果になっただけで,「思い出補正を打ち破った」とまでは言えない.

この点が物凄くモヤモヤさせる部分で,結論に対して実践したことが何一つなく,アンケート調査によって現代に生きる人が感じていることが明らかになっただけ,という感想をいだきかねない.講演は見ていないので,もしかすると思い出補正を打ち破る方法を実践したことがあるかもしれない.

 

もう一つモヤモヤしたのは,既存のキャラクターや設定,世界観を共有したら,既視感を滅茶苦茶感じてしまうんじゃないのかと思った点.これがゲームシステムの話だとしても,記事の中で既視感のないゲームが重要だと説明している.だとすれば,なおさらゲームシステムだけ新しくして既存タイトル流用しても,プレイヤーからすれば既視感そのものは拭えないんじゃないかと思った.

また,設定や世界観によってゲームシステムも制約を受けるので,もし既存のタイトルを流用すれば,制約を受けた部分で強い既視感を生む可能性ももちろん高くなる.

そうならないようにゲームデザインすると言っても,過去のゲームを事例として,既視感の有無はちゃんと調査されているのかという疑問もわく.例えば,あるゲームが影響を受けたゲームは何か,どのようなゲームに似ているのかグラフ化して,本当に既視感のないゲームは過去に作れていたのか調査しなければ説得力がない.既視感のあるゲームしか作れていないのに,既視感のないゲームは作れない.

この記事を読んだ限りの感想を書いてしまうと,ある体験をベースにゲームをデザインしたとして,それと同じ体験をした人がいるならば,それは間違いなく既視感になる.だとすれば,色々な人が潜在的に体験していることをベースに,共感するようなゲームをデザインする方向性の方がやりやすいのではないのかなと思う.それは当然,誰しもが既視感を抱くだろうし,既視感がなければ共感を得られないわけだからしょうがない.至極まっとうだしあまりおもしろくない.

 

で,話はそれなりに飛んで,この記事を読んだ限りだと,かなり主観的な内容だし,個人のパワーに依存してしまっている問題がある.特に,こういうのは研究のお作法で言うところの再現性のない問題にぶち当たっている.

よくある議論として,「産業分野は既存のパッケージングばかりだし,再現性のない適当なことをクローズドでやっている」「学術分野はパッケージングもろくにせず,再現性と言いながら動かせるものを作っていない」というのがあって,悲しいかな,産業と学術は猿と犬なんじゃないかと.

確かに,言っていることは両方ともその通りで,両方とも経験があるからこそ,両方に共感できる部分がある.産業の人は学術の人を批判してばかりだし,その逆ももちろん起こっている.産業も学術も,これまでの視点や考え方はたぶん変わらないと思う.

ただ,それだと今までどおりのものを,今までどおりに生産し続けるだけになってしまうので,とてつもなくつまらないものになる.かの記事を読んでいて思ったのは,産業と学術の両方を体感して指導を受けていないと,あまりにも偏った人間になっちゃうかもしれないなぁということ.

やっぱり,産業の人も学術の人も,対極の人を批判しているだけで改めるということがないわけですね.となると,自分はどうするかという部分で,客観的な視点からダメな部分を改めるほうがいい.そういう人が,何かしら新しい物を作る可能性があるかもしれない.

 

そういうわけで,今後ジョブズみたいな人材云々の話で言うと,大学4年まではインターンやアルバイトなどの経験で,産業の視点を身につけつつ,ドクターを取って研究の視点を身につければ,もしかすると何かしら新しい視点を持った人になるんじゃないかなぁとか思った.

批判精神もそうだし,良い物を作るというのもそうだし,どちらかが欠けていると,新しい良い物を作れなくなるんじゃないかなぁ.そんなことを思った月曜日の午後だった.

気が付いたら優秀論文賞を頂いていました

この前,DICOMOで発表した論文ですが表題の通り,ギョエー.人に言われて初めて気が付きました.連絡とか全くなかったので寝耳に水で驚いています.

実は,8月の終わりに栢森情報科学振興財団というところの研究助成金に応募しまして,当然のことながらDICOMOの研究を継続する形で申請書を書いていました.当たり前のように業績欄を埋めなくちゃならなくて,DICOMOの論文を一応書いておいたのですが,もう少し早く知っていれば,ヤングリサーチャー賞だけじゃなく,優秀論文賞も取ってるって書けたんですが,今更言ってもしょうがないので,採択されることを祈っています.

ちなみに,栢森は意外と間口が広くて,申請者の職種に制限がない素晴らしい財団です.普通は定職についてる研究者が対象になっていて,博士課程の学生とかは助成金の対象にならないことがすごく多かったりします.学振取れないので助成金狙って業績積み重ねるしかないなと思った矢先に見つけられてラッキーでした.

でも,予算としての研究費は物凄くたくさん取れるんですよね.栢森だと200万円が上限で,学振だと150万円,他にも色々な助成金あります.研究費を獲得できて嬉しい! と思う一方で,予算の半分ぐらいは発表のための費用なんですよね.僕の場合はハードウェアが必要な研究なので,ハードウェアをたくさん買うことを想定して予算組むわけですが,論文の掲載費は10ページ使うと15万円にもなります.学会の運営資金になるのでしょうがないだろうなぁとは思いますが,IPSJは電子化してるんだからもう少し安くならないのかとか思いました.

渡航費とか参加費もそれなりにかかったりするので,その分の予算を申請するのはしょうがないとは思いつつ,200万円の予算を申請しているけれども,僕の(奨学金を得ているおかげで)手取り年収もそんなものになるからなんか不思議だなぁとか思いました.

例えば,Kickstarterなんかでは,200万円のプロジェクトは滅茶苦茶成立し難いです.たぶん,僕の研究では30万円でも広告とか報告とか,相当苦労しないと得られないような気がします.一方で,研究予算を申請するための申請書を書くのに,実質3ページで10人日ぐらいかけました.これで採択されれば200万円の予算がおります.ゆーても採択率30%ぐらいなので油断はできませんが,採択されたとしましょう.晴れて200万円の予算が降りましたやった!

研究者になるのであれば,とにかく予算との戦いで,たくさんの申請書を書くだろうということは容易に予想できますが,どのような手段で予算を得るかによって難易度が跳ね上がるんだなぁということを,今回申請書を書いてて思いました.Kickstarterのほうが明らかに難易度が高く,苦労する割に,得られる予算の数も少なく,支援者に細かくリターンする義務も発生すると考えると,研究助成金で指定期間内に十分な成果を論文の形で報告する方が精神的に楽です.やることをやればいい.あれをやってこれをやって,これを報告して,これを説明して,支援者が満足するように頑張る,ということをやらなくてもいい.既に製品ができていて,製品の予約と広告の代わりにKicksterterを活用するなら非常に賢いと思います.そういうことで,研究のセオリーを知っている野良エンジニアの方がいるのであれば,論文誌を出したり,特許取ったりする代わりに,研究助成金で生活するの,すごく良いと思います.問題は,研究助成金のほとんどは研究者個人にお給料が出ないので,数百万円持っていても使えないということも起こり得るとは思いますが()研究者個人にお給料を配分する仕組みがあると,在宅野良研究者みたいなことできるんだけどなぁとか思います.そういう生活に憧れる.

Green DayのWaitingに見るわけわかんない歌詞とPVの分析

はじめに

Green Dayの「Waiting」と言えば,あの悪名高いアルバム「Warning」に収録されている10番目の曲です.「Int Superhits!」にも収録されてるので,Green Dayの中ではかなりの名曲になるんじゃないかなと思います.

 

 

Warningというアルバムは,実はそもそもパンクじゃないという批判が殺到するぐらい評価が別れています.と言うのも,収録曲のほとんどはパンクっぽくないし,メロコアっぽくないし,むしろポップに近いような曲が多く収録されています.

Green Dayファンからすると,「うんうん それもまたアイカツだね」って感じで受け流すのですが,改めてWaitingのPVを見てみると,実はこの歌詞とPVが合わさって天才的なパンクになるんじゃね? ってちょっと思いました.

歌詞とPVの流れ

歌詞の和訳はたくさんあるので,とりあえず以下の歌詞を参考にしながら,流れを追っていこうかなと思います.

Green Day/Waiting

まず,歌詞の内容は,運命だとか星だとか,光り輝いているとか,そんなありきたりな内容になっています.なんかちょっと普通だなというか,まあ普通だからパンクじゃないって批判されるんですよね.

一方で,PVはどうなっているかと言うと,ある1軒のお家の中でパーティだかどんちゃん騒ぎをする内容なのですが,ビリー以外の人はスローモーションです.イントロから始まり,お邪魔しますって感じで人が流れ込んできて,ひたすらたくさんの人が暴れ回ります.

じゃあ,歌詞とPVって何か関係あるの? って言うと正直,最近までは意味がわかりませんでした.スローモーションで暴れる人たちと,光り輝いているとか,運命だとか,繋がりがいまいち見えてこないです.運命の人がフォーカスされているわけでもありませんし,ビリーは色んな所に出現し,挙句の果てに時間まで止めてしまいます.

わけわかんないだけで終わらせてしまうと,ずっとわけわかんないままです.しかし,PVを見ているとそれなりに疑問点が出てきます.

  • なぜスローモーションなのか
  • なぜたくさんの人がパーティをしているのか
  • なぜビリーだけ動いていられるのか
  • 踊っていない人たちは,どうしてその行動を取っているのか?

ここで疑問点を並べて結論ありきで考えてしまうと,これはビリーの脳内なんじゃないか,という仮説が立てられます.さらに,歌詞からこの疑問点を俯瞰すると,やっぱりセックス&ドラッグの話なんだな,ということがわかるわけです.

なぜセックス&ドラッグの曲なのか?

例えば,

Downtown lights will be shining

On me like a diamond

Ring out under the midnight hour

このパラグラフですが,直訳してしまうと翻訳サイトみたいになってしまうのですが,ring outはガンガン鳴り響くという意味合いがあるので,露出オーバーでガチで眩しい状態のことを言っているわけです.レーシック手術に失敗すると,夜中に少しの光を見ただけで,物凄く眩しく光って見えるらしいです.また,瞳孔が無理に開いている状態だとこういう現象が起こりやすいらしいです.で,こういう状態を引き起こすものって何でしょう? って考えるとやっぱりドラッグなんですよね.大麻だとか覚せい剤は瞳孔を開く作用があったりするわけです.当然,この大麻と覚せい剤は後の描写で出てきます.大麻は2:20,これは小麦粉をばら撒いています.覚せい剤は1:47辺りです.覚せい剤は海外だとCrystal Methと呼ばれ,板状のプラ版みたいなものを砕いてから粉状にします.ブレイキング・バッドとか,ハリウッド映画だとかでやってました.ガラスのようなものを重たいもので砕く感じは,まさしくそれだなと思いました.

Feeling on the tip of my tongue

とか,舌の先でなんで感じるんだろうと疑問に思うわけですが,これもLSDが薄いフィルムでできていて,舌の先に乗せるだけでトリップできるわけです.これとリンクしているのが,1:40の意味もなくジュース捨てようとしてる人なわけです.これらを総合して疑問点を見ていくと,暴れている個々の人たちはビリーの分身で,玄関からお邪魔するのは,薬が効いて爆発する瞬間なんだなということがわかります.これは現実とリンクしていて,最後にトリップから覚めてやっちまったぜ,って顔をするわけです.

Better thank your lucky stars

「気持ちいいよヤクの売人さまぁ」って言いながらアヘってるのが目に浮かびます.どおりで「幸運の星に感謝しろ」って訳は意味不明になるわけです,薬だけに.

Waitingのテーマは何だったのか?

ここからPVを通して歌詞カードとメロディを再解釈すると,楽しそうなんてとんでもない,ドラッグ依存がハイになっているだけの曲になってしまうわけですね.セックス&ドラッグの国ならではというか,なんというか.

じゃあ,これは曲を通してドラッグの話なのかというと,歌詞そのものは抽象的にできているので,あくまでPVが歌詞にイメージを与えていることになるわけです.我々はここでPVがドラッグの話だと解釈し,歌詞がドラッグの話であると解釈しただけに過ぎなくて,もう少しメタな視点で歌詞を読んでいくと,依存の話になっていくわけです.

この歌詞の凄い所は,おおよそ依存であればだいたい当てはめることができて汎用性が非常に高いのです.例えば,過食症だとか食べてる間は気持ちいいんでしょうけれども,食べたあとは物凄く落ち込むわけです.ここで,コーラスまでに繋ぐのに一度転調する部分があります.

I'm so much closer than

I have ever known

「今までよりもヤバイのが来そう」と予言しているわけですが,「Wake up!」してからの「Better thank your lucky stars」は感謝する反面,ちゃんと皮肉になっているわけです.「ギョエー」とか言いながら,一番苦しくてガンガンする部分が過ぎると,また元に戻っちゃうわけです.こう考えると,Waitingって名曲だけじゃなくて,ちゃんと作られているし,ビリーの作曲・作詞の才能が滅茶苦茶光ってるわけです.歌詞とメロディが多重構造になっているので,様々な解釈ができるだけじゃなくて,テーマを通して普遍的なことを伝えています.具体的なことを書くのは簡単なんですが,メタなものほど難しいはずです.夜中もいい時間になってしまったのでそろそろ寝ようと思いますが,実はWarningのアルバムはGreen Dayの中でもかなり遊び心のある良いアルバムなんじゃないかなと思います.他にもWarningとかMinorityとかいい曲がいっぱい詰まってるので,割りとGreen Dayを聴き始めるならおすすめしたいアルバムです.というわけで,Watingを気に入った人がいたら,是非Warningを買ってください.輸入盤が滅茶苦茶安くなってます.

 

Warning

Warning

 

 

実家に帰ってのんびりするの巻

先週の水曜日ぐらいから実家に帰ってのんびりしてた.神奈川工科大学はお盆の時期に断水と停電をしてくれるため,研究室でほとんど作業ができない.やることをやれないので,仕方なく実家に帰ってのんびりしてる.

実家に帰ってやっていることと言えば,映画とコーディングのどちらかで,それ以外は猫と遊ぶぐらいで特になし.暇だったので,ダンジョンの自動生成について試行錯誤してた.ダンジョンの自動生成アルゴリズムには様々な種類があり,こういうの好きな研究者は評価するの本当に大変そうだなと思った.

ダンジョンの実装は,BSP木で実装する方法と,2分木グラフで実装する方法の2種類について試行錯誤した.BSP木で実装する方法はあまり綺麗なダンジョンを作れないことがわかった.実装が悪かったのかもしれないけど,細長い部屋がやたら生成されて困る.2分木グラフは,ダンジョンを等間隔で分割して,最初の部屋から2分木で隣接する部屋を確保する方法で,理論的には綺麗な形のダンジョンが作れる.こちらはまだ途中で作っている最中になっている.

人間,何もやらないとクリエイティブになると思う.入院している時も,やたら本を読みまくって暇を潰しているうちに,いつの間にか小説をずっと書いて過ごしていることになった.なんか突然爆発的なひらめきで書き続けることになったものの,退院したら何を書くのか忘れてしまって長く続かなかった.

クリエイティブを維持するには,あらかじめ途方もなく暇している時間と,そこから得た閃きを実装し切るための長い時間が必要なんだなと思った.退院したせいで途切れたけれども,形としてはまとまっていたりするので,強く集中する時間さえあれば完成させられるかもしれない.

集中して物を作っている時に途切れたりすると,見返した時にバカバカしく感じる時がある.たぶん,それはある程度冷めてしまったから仕方ないことなのかもしれないけれども,創作する上では邪魔な要素だと思う(論文や発表だと,一時的に冷ましておかないと大変だけれども).

伊藤計劃虐殺器官を短い期間で完成させたとあとがきに書いてあった.ひらめきと集中はどうしても必要で,十分な期間に入ったらスイッチを切り替えられるような精神的な環境が必要なのかもしれない.

自作PCでデモをしよう

はじめに

最近,よく耳にするというか自分でも体験があることに,デスクトップPCで開発をやっていたらノートPCで動かすことができなかったということがある.ノートPCを買う予算もないし,高いノートPCを買ったとしても,デスクトップと比べたらスペックなんてたかが知れているので,ノートPCだけに何十万円も投資するのは少し馬鹿げてるかもしれないと思った.

実は,ちょっと前のDICOMOというシンポジウムで自作PCを現地で組み立てデモをするという冒険をしてみた.祈りながら組み立てたので,動いた時はとても嬉しかった.その時に準備したことや,注意したほうがいいようなことを共有したいと思う.

自作PCでデモをする目的

まず,デスクトップPCで開発をやっていると,意外とパフォーマンスを食っていることに気がつかないことがある.それで実際にノートPCで動かしてみたりすると,スペックが足りずに処理落ちをすることがあるかもしれない.

そこで,どうせデスクトップPCで開発をやっているのだから,そのPCを直接持って行ってしまうということを考える.特に,自作PCはノートPCと比べると安価に組める.ノートPCは壊れると修理に出さなければならないが,自作PCは壊れたパーツだけを交換するという方法で乗り切ることができる.

PCパーツの準備

PCパーツはだいたい壊れやすいもの,安価なもの,壊れると困るもの,多少乱暴に扱っても壊れないもの,忘れると起動できないものに大別される.時々,複数の要素が絡まる場合もある.

例えば,ハードディスクは壊れやすい上に壊れると困るものの一つになっている.そういうものはそもそも壊れるので使うのを諦めるという選択をせざるを得ない.

一方で,メモリは8GB2枚でも1万円少しで手に入る.その上,ちゃんと包んでいれば壊れない.もちろん,折れると動かなくなるため,折れないようにする必要はある.

自作PCの醍醐味は,目的に応じて構成を組み替えることにあるので,例えばOSを新規インストールして環境をセットアップできるのであれば,安価な64GBのSSDを新しく購入して,デモのデータをそこに入れることもできる.

 

まずは,搬入するPCパーツの構成を考えておく.絶対に必要なのはSSDの予備で,これはクローンコピーできるようにしておく.

センチュリー New裸族のお立ち台DJ クローンプラスUSB3.0 CROS2U3CP

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 例えば,出先で破損した場合,オリジナルのSSDが1台しかないと,データを復旧することが絶望的になる.なので,こういうのは,いつでもクローンしたりコピーできるような体勢を整えておく.実際,そこまで高くはないので,保険だと思えばいい.

そして,実際にデモで持っていくのは必ずクローンにしておく.

電源ボタンは忘れやすい.ケースから抜くのが大変だったら,電源ボタン用のパーツもあるので購入しておこう.とにかくPCに電源を入れるためのボタンがなければ動かないので,それをまずはどうにかしよう.

梱包の話

梱包は意外と厳重じゃなくてもなんとかなる.とりあえず,スーツケース1台で運ぶことができるのは間違いない.じゃあ何が重要なのかと言うと,パーツひとつひとつを丁寧に梱包すること.

そこそこ頑丈なパーツもあったりするけれども,油断していると破損する場合がある.プチプチでちゃんと梱包し,段ボールでサンドイッチにすることをオススメしたい.

そして,スーツケースに隙間が空いてしまうようなら,なるべく新聞紙などで軽く埋めておく.たまに激しくスーツケースが暴れることがある.新幹線に間に合わないなどでガタガタ動かすと,当然なかもぐちゃぐちゃになりかねないので,なるべく隙間を作らないようにしておく.

梱包は行きだけではなく,帰りも梱包しなければならないので,できれば簡単に梱包作業を繰り返せるような工夫をしておきたい.

スーツケースは,ディスプレイを持って行くなら大きいものを選んだほうがいい.小型のプロジェクタをDICOMOの時に持っていって,それでケースがパンパンになるほどだった.小さくて薄いキーボードがなければ,もしかするとケースが入らなかったかもしれない.そう考えると,ディスプレイを持って行きたいのならば,必然的に大型のものになってしまうので,その辺りを考えながら調達するといいかもしれない.

練習の話

いくら自作PC詳しいと言っても,現地で組み立てる時間などの関係で,すぐに用意しなければいけないときがある.その点についてはスケジュールと相談の上,実際に組み立てるための練習をしておいたほうがいい.

SSDが認識しないと慌てたり,BIOS画面から先に進まないとか慌てたりする時もある.なぜ,動かないのか即断できる程度の経験があればいいものの,普通はそういうことができない.ちなみに,両方ともSSDに電源が刺さっていなかったり,グラボの補助電源つなぎ忘れたりしていただけだったりする.

こういうミスで長い時間を取ることもある.なので,ある程度,トラブルシューティングできるように練習を繰り返したほうが,当日の準備がスムーズになる.

これは余談ではあるものの,練習するときは綺麗な机でやったほうがいい.練習が終わって梱包したときに,机の上に何かが残っていれば忘れ物をしたということになる.忘れ物を一つでもすると実際動かないので,忘れ物は言語道断になる.発表場所が秋葉原ならまだ手に入るが,スキー場だったら諦めるしかない.そのためにも,忘れ物をしない環境を作って,そこでやるというのがデモの準備ではどうしても必要になるんじゃないかなと思う.

熱暴走の話

ケース内だと熱がこもりやすいとおもいきや,実はケースのほうがエアフローが良かったりする.そのため,油断しているとCPUが熱暴走を起こして止まってしまうことがよくある.特に,夏場の屋外だと,きちんと対策を取らないと,グラボも逝ってしまうことがあるので,これらのパーツの冷却を考えなければならない.

とりあえず,必需品だと思うのが,冷却性能が比較的高いCPUクーラーとシルバーグリス.特に,乾いたCPUにCPUクーラーを乗っけても,そんなに冷却効果が得られない.

また,どうせむき出しになるのだったら,会場で扇風機を借りるなどしておきたい.扇風機で強引に熱を飛ばさないと,夏場の自作PCはすぐにバテてしまう.高級なグラボほど消費電力が大きいので注意されたい.

消費電力の話

消費電力は事前に確認しておきたい.1000Wもあればだいたい足りるとは思うものの,様々なごちゃごちゃした機械が必要になってくると,それだけ消費電力がかさんでしまう.あらかじめ会場で使える消費電力を聞いておいて,その消費電力内でデモができるかどうか検討するべきである.どうしてもダメなら,委員会の人と相談するなりして,レイアウトの変更や,電源の確保などを事前にしておかなければならないことがある.直前になって電源がたりないなんてことがあると,これもトラブルの一つになる.

なので,しっかり自分のシステムが使用する消費電力の量を把握しておこう.全体の消費電力はワット数を足し算すればいい.アダプタの入力を読んで,アンペア掛けるボルトでワット数も出てくる.

持ち運ぶときの話

梱包して全部まとめて運ぶぞとなったとき,死ぬほど重いって気が付くと思う.無理なら無理で周りの力を借りるしかない.スーツケースいっぱいの金属の塊になれば,暴力的な重さになる.新幹線の棚に無理やり押し込もうとして落としてしまうと,当たり前だけど何かが破損する.

そういうことがないように,スタッフとして友達を連れて行くとか,乗務員の人に手伝ってもらうとか,とにかく周りの力を借りないと運ぶのが難しい.重い.

デモ会場で荷物を受け取れるだけの余裕があるなら,小さな部品だけ自分で持っていって,大きな部品を宅急便で送ってしまう方法もある.もちろん,割れ物注意,振動注意,天地無用,あらゆる宅配オプションを付けて運んでもらう必要がある.佐川急便はやめたほうがいい.

初期投資にかかる費用について

ノートPCだと,AlienwareのプラチナでCore i7 4980HQ,GTX980M,DDR3-16GBの構成だと36万円ぐらいする.スペック的には,Core i7 4790K,GTX770とだいたい同じぐらいになっている.ノートPCのいいところは,持ち運べるところにあるので,これぐらい高くなるのは仕方がないとはいえ,13万円ぐらいで同じスペックのデスクトップPCをゼロから組めてしまう.

かと言って,ゼロから組むのが勿体無いのであれば,壊れにくい部品を持って行くことでコストを抑えることができる.例えば,CPU,メモリ,電源,SSD,CPUファンは梱包さえしっかりしていれば壊れにくい.マザボグラボはもしかすると壊れるかもしれないので,新しく買う必要があるかもしれない.それでも初期投資は6~7万円ぐらいで済む.そこまで高スペックのグラボを使っていなければ,もう少し安くなるかもしれない.

持ち運んで壊れるかもわからないものは,とにかく複数買うようにしておこう.グラボマザボも2枚ずつ持って行けば,片方がポンコツになっても,また組み直せば復旧させることができる.当日,デモができないことで信用を失うことのほうが大きな損失になるので,そこの保険はしっかりかけるように,複数のバックアップを用意しておこう.複数のバックアップを用意したとしても10万円にも満たないはず.

おわりに

DICOMOで実際に自作PCを持ち運んで得た知見を並べてみた.

基本的に自作PCでデモ発表する場合は,当然のことながら自作PCができるぐらいのスキルは欲しい.PCを分解すればそのまま向こうに持ち運べるかと言うと,そういうわけではない.ただ,そのために自作PCについて勉強するのは有りだと思う.普通の自作PCとは異なり,何度も設営などしなくてはならないため,組み立てスキルは十分に磨けると思うし,トラブルシューティングもうまくなると思う.

ただ,注意して欲しいことは,自作PCを始めたばかりなのであれば,自分のPCを分解するのではなく,ゼロからPCパーツを集めたほうがいいということ.分解してうっかり静電気で壊してしまったりすると,一時的に作業ができなくなったり,最悪はバックアップを取っていない状態でデータを飛ばしてしまうこともある.

とにかく,デモ発表では,きちんと復旧できる態勢を準備しておきたい.何系統かダメになっても復旧できるようなパターンを用意しておく.壊れにくいからと言って油断しない.ケチらない.

もう一度,自作PCでデモ発表をしたいかと言ったらしたくない.重い,死ぬ,暑い,不安.ノートPCを買う予算を誰か付けてくれ.以上.

大腿骨を折って入院していました

7月21日に自動車教習所で普通二輪の練習をしていました.まあ,ここでも立ちゴケをするのですが,逃げた時に当たりどころが悪く,左大腿骨頸部骨折になってしまいました.

最初は普通にコケたと思ったのですが,足を捻った時に激痛が走るので,教習中止して近くの病院に行きました.レントゲンを取ったらヒビが入っていました.でも骨折らしいです.それから近くの大きな病院へ緊急入院しました.

結果として11日間入院し,リハビリ期間は3ヶ月,さらにネジを取るのにもう一度手術があって入院1週間が確定,リハビリ2ヶ月.どうやら,しばらくバイク乗れそうにありません.これなら自動車の免許取りたいです.

股関節は血流が少ないため,骨折すると壊死しやすいとかどうとかで,人工関節にされる可能性もありましたが,不幸中の幸いなのか,とりあえずネジを入れるだけで済みました.松葉杖を使っているので,歩きづらくてしょうがないです.

 

入院していた11日間は論文を書くのに使っているはずの時間だったのですが,ネットが使えないせいで調べ物ができずに困ったことになりました.締め切りまで4日しかないのですが,特別な事情で締め切りは延びないですかね? 実験も2種類ぐらいやってなくて非常に困ったことになっているのですが…….ひとまず,あと3割ぐらい書けば完成しそうなので,さっさとやるしかないんだろうなと思います.投稿さえできればなんでもいいです.投稿したら,今のところほとんど生活困難なので実家に帰ります.

MPMアルゴリズムを実装してみた

GistにMPMアルゴリズムC++実装をアップしてみた.

https://gist.github.com/GRGSIBERIA/735e8727c4e0c152a841

 

もともとのコードがJavaだったので,C++で動くように色々と変更しつつ,多少コードを綺麗にしたりしてみた.2~3時間ぐらいかかったような気がする.

ウィーナー・ヒンチンの定理でFFT2回とNSDFで最大になる場所を求めれば,自己相関関数の周期を求めることができるらしいのだけれども,FFTを2回もやる必要は全くなく,NSDFとzerocrossingを求めるだけでできてしまった.ソースコードの中でFFTをやってるとは思えないし,論文と実装を照らしあわせてもNSDFだけで求められてしまったので混乱している.でも,とりあえず動いたのでよかった.

実際に実装して動かしてみたものの,とてもリアルタイムでは動かせない速度になってしまって困ってる.窓幅を変えてやってみると,もしかするとO(4^n)アルゴリズムなんじゃないかと思うぐらい,処理速度がブレてしまって困っている.

精度はそこそこ良いものの,時間応答性能がとても低い.比較的明瞭なサイン波に近いものであれば,簡単に検出することは可能であるものの,和音を弾いた場合は全く使い物にならないことがわかった.速度に関しては参考にしたところの実装が悪いような気がする.論文の作者の人がシステムを公開しているから,少し試してみたほうがいいのかもしれない.

 

明日になったら実験環境を構築して,ギター一本試してみようかなと思う.単音と和音の検出精度と,時間応答性能について実験をしてみたい.