未踏作業日誌――余計なもの作るよ!

未踏の作業日誌的なものを書きましょうということで書くことにしました.余計なことばっかりしています.

過去へバックキャストして将来を考えてみる話

先日,出張で2日間留守にしていましたが,その中でかなり刺激的なことがあり,自分の中の考え方を変えるいい機会になりました.関係者の方々,お話のできた方々にお礼申し上げます.ほぼ今までの考え方がひっくり返るような二日間だったと思います.

出張中,自分の人生を少しバックキャストして将来を考えてみる,という話がとにかく印象的でした.お話を下さった方も,一つのことに対して十年以上コミットしている方だったのでかなり参考になりました.

自分でも自分の人生を振り返ってもう一度考えなおすなんてことは,現在の立場で解釈することはあっても,過去から未来に繋げるということはあまりやったことがありませんでした.そういうわけで,出張の帰り際とか,風呂入っている時とか,ぐるぐると考えてみました.

 

僕のパーソナリティとして,楽器は10年,プログラムは7年(色々触っていた時期を除く)ほどやっていることになります.また,これは後で書きますが,3DCGは3年ぐらいです.僕は色々趣味を持っていますが,それでも一貫して楽器とプログラムはやめていません.なぜ好きなのか,という問いはここでは長くなりすぎてしまったので省きます.

Mayaは大学1年生(正確には高校3年生の冬)にやり始めました.そのとき,最初に抱いたモチベーションはキャラクターに楽器を弾かせることでした.

その頃,ボカロが既に浸透していたので,割りと歌姫としての初音ミクがバンドミュージックをやるような動画を作りたいと思っていました.特に,Green Dayのファンということもあったので,ミクさんでミュージックビデオを作る構想をよく練っていました.

Maya(3DCG)とプログラムが結びつくことはもはや必然的とも言えました.Mayaの機能で解決できないことをMEL(プログラム)によって解決することができます.僕にとってMayaをやることは,3DCGとプログラムを同時にやる,ということでもありました.

ちなみに,MMDと出会ったのはたぶん,大学2年生の春ぐらいだったような気がします.授業で貰ったブルーマンより何倍もかわいいミクさんでアニメーションを作れるところに感動しましたが,この頃はまだローカル軸の切り替え機能がなかったのか見つからなかったのか,大変不便な思いをして,やっぱり自分でリグを作ったほうが楽ぐらいに思いました.PMXが出た辺りでほぼMayaに必要なリグの要件を揃えたのでひっくり返りましたが.

一方で,就職活動を見据えると,やはり自分の中での一本柱が求められるとよく言われました.結果的に僕はゲーム業界に対して折れる形で,大学4年生あたりから3DCGは諦めてプログラムに専念することにしました.この選択は本当に後悔しています.

結果的に無理やりハシゴを外してしまったがために,大学4年生以降から自分のやろうとしていることがかなりブレるようになりました.Mayaをやるということは,3DCGをやるのと同時にプログラムをやることと同じでした.同じ年にMMD for Unityの開発を行いました.しかし,Unityを使う以上,常にプログラムが求められます.もともとUnityはゲームエンジンなので,プログラムを書かないと望んだものは作れません.そのようなこともあり,後半から自分でもうまく行かず,自分からコンテンツを生み出すということができないでいました.

大学院生になってタグの研究へシフトしましたが,目標として奨学金の返還免除を狙っていたので,そのために業績ベースで研究を行える対象を選びました.それがタグ研究です.基本的には実験結果・考察を一つ一つの塊ごとに発表していたので,最初にガッツリやってあとは何もプログラムしていなかったことがありました(共有リポジトリの原案は割りとこのタグ研究が元になっていたりするので,一概には否定出来ないのですが).

そのようなこともあり,未踏に挑戦するのは僕の中の3DCGを取り戻すという意識が強かったと感じます.それでもプロジェクトはプログラムに偏っていて,僕が以前から好きだった3DCGとは離れている,とここ数ヶ月を振り返ってみて思いました.

よくよく考えると,ここ3年ほど3DCGができないことに対してかなりの未練を持っていました.あわよくば時間があれば3DCGやりたいとか思っているのですが,だいたい3DCGをやるにはたくさんの集中できる時間が必要です.将来はたくさん金を稼いで,余ったお金を元手に美大に行って3DCGやるとか考えたこともあり,やっぱり3DCGも楽器やプログラムと同じく,それなりに好きだったことを今更になって気が付きました.

僕は途中で未踏のテーマを変更したいと,記憶によると本家ブログのほうに書いたと思いますが,やっぱり当時のテーマは普通にプログラムだと思っています.僕にとって3DCGのできる機能がほとんどありません.

逆に最近リリースしたMMD Fukuwarai 2は何気にデザインするための余地が少しだけあって,自分でもちょっだけ遊んでいたりしました.さすがに機能として少なすぎるため,もっと成長させられると思っています.なので,MMD Fukuwaraiから派生して,Web上でミクさんにポーズを取らせるシステムを作り,そこからさらにモーションを作るシステムを派生させるのが,ここ4月の目標なんじゃないかなと思っています.もちろん,共有リポジトリが大前提のシステムです.

 

少し脱線しましたが,僕にとってプログラムと楽器と3DCGは絶対に抜いてはならないものだと言うことがわかりました.そこから将来に向かってキャストすると,自ずと(楽器+3DCG)×プログラムで何かするのがやっぱり一番人生を楽しく過ごせるのではないかと思いました.

それでじゃあ死ぬところまで細い針を通したわけですが,そこでじゃあどのようなものを作るのかと言われたら,一番先に思いつくのがキャラクターと一緒にバンドをやるということです.

ただ,これはさすがに未踏期間中(残り3ヶ月)では未来技術過ぎて無理っぽいので,もう少しその技術を実現するためのパスを通すべきだなと思いました.すると,先ほどのMMD Fukuwaraiからの派生が間違いなくキーになる技術だとは思いますが,一応未踏で掲げたテーマの3Dキャラクターぐらいはかすらないと事務局の人が大変です.
目標(3Dキャラクターとバンドをやる)にフォーカスしたとき,やはり重要なのがキャラクターです.モリモリ動くのはもちろんですけれども,まるでセッションをしているかのようにインタラクティブな反応がないと面白くありません.キャラクターは対話の中でしか生まれません.

小池一夫先生によると,キャラクターは設定ではなく,動きや会話の中でしか生まれないと仰ってました.ミクさんも色々なクリエイターとの対話の中で生まれてきました.ネギ振って縞パン履いてるミクさんというのは元々存在しなかったのです.つまり,3Dキャラクターを作るとは,キャラクターとの対話を重ねながらキャラクターを育てるようなことを指していると考えられます.

しかし,普通に知識データベースで伺かもどきのようなものを作ってしまっては面白くありません.伺かもある意味,アニメーションと人工知能の融合とも言えます.また,集合知で知識データベースをガンガン集めるのは簡単ですが,利用者がコンテンツを生み出すことがあっても,コンテンツ自身が新しいコンテンツを生むことはありません.かと言って人工無能をベースに会話内容を修正する形はなんだかなぁと思います.

ここでふと思い出すのは過去にSEGATwitterで,ミクダヨーのお菓子のコピーを募集するようなことがありました.僕も積極的にツイートしたのですが当選には至らず,残念だったのですが,割りと気軽にツイートしていたと思います.大喜利があると楽しいですね.

そう考えると,アニメーションに対してキャラクターが発するセリフをアノテーションするシステムを作れると,よりキャラクターっぽくなりますね.こういうのは蓄積されれば蓄積されるほど,セリフの内容に対する期待が具現化されていきます.

ここまで来ると膨大なアニメーション+セリフデータが蓄積されるようになります.ここまでは利用者とキャラクターとの対話でした.もしかするとこれで他のキャラクター同士で対話可能になるかもしれません.あるキャラクターのセリフに対する反応を,別のキャラクターで作るシステムを考えます.キャラクターたちが互いに会話するようになり,その中で物語が生まれるようになります.ドラマが編み出されるわけです.そして,ここにカメラワークや舞台が加わることで劇になります.

さすがにカメラワークや舞台を設けることはやり過ぎだと思いますが,それでもお互い何も知らない,だけどミクさんやボカロの好きな人達が小さな物語を書き始める.それが一つの大きな物語になるわけです.

 

ひと通り点と点が線で結びつきました.現状のアイディアでは対話が線形なので,限定的な会話しかできないのですが,樹形図状に広げられるようにすると,特定の会話パターンと無限の会話パターンの2種類が織り込まれるようになります.時には無限の会話パターンから特定の会話パターンが生み出されることもあるかもしれません.そこの無限の会話パターンをうまく紡ぐための仕組みが特に重要だと考えられます.

ここでもう一度振り返って,このようなキャラクターを育てるためのシステムは本当に3DCGができるのかと考えてみました.このシステムを広めるためには必然的に多くのモーションを作らなければなりませんし,大喜利的にモーションを作りセリフを考えなければ成立しえません.僕は格闘モーションやダンスモーションが好き(ギターやドラムはモノがないとできない……)なので,ごくごくたまにGIFアニメを作ってTwitpicとかに上げていましたが,これなら僕でも長く遊べそうだなと思います.

という訳で,しばらくはMMD Fukuwaraiを拡張しようと考えています.高橋留美子は一日中真っ白な原稿を見て,書くものが見つかったら書き始めたそうです.ずっとワードの画面を眺めて考えていましたが,思いのほかいい落とし所が見つかった気がします.

期間中,どれぐらいの速度でどこまでできるかはまだわかりませんが,確実に時間が余るのでまた挑戦することが出てくると思います.その時はまたバックキャストして今のシステムからプログラム+3DCG+楽器ができるシステムを新しく繋げていこうかなと思います.