未踏作業日誌――余計なもの作るよ!

未踏の作業日誌的なものを書きましょうということで書くことにしました.余計なことばっかりしています.

エロゲが売れなくなった理由の一つは絵の価格が暴落したから

こんなまとめを見つけたので読んでみたけど,そもそもユーザが本当に欲しいものはエロゲだったんだろうか.

togetter.com

 

というのも,今ではPixivに行けば無料でエロ画像が大量に手に入る時代になっていて,SankakuChannelやDanbooruなどが高度なアーカイブをしているおかげで,世の男性女性は夜のおかずに事欠かない.

僕がインターネットと出会ったのは2004年辺りで,相互リンクだとか同盟だとか,そもそも検索エンジンの登録が審査制になっていたり,エロ画像を探すのに物凄い手間がかかる時代だった.

エロゲは物語とエロ画像を同時に満たすことのできる画期的な媒体だったけれども,今では東方や艦これ二次創作なりなんなり,既に出来の良い物語が存在していて,おまけに絵のうまい絵師がPixivやTwitterでエロ画像をせっせと投稿している.

昔は時間的隔たりがあったけども,今ではPixivやTwitterのおかげで,エロ画像を探す時間も短縮できて,量と質が担保されてしまっている.こんな状況でエロ画像目的でエロゲを買う人はいるんだろうか?

 

エロゲは差分抜けばだいたい50枚ぐらいの画集になる.声の出る小説付きで7000円ぐらい.小説のエンディングは数パターンあるけど,妙に使い回しが多い(同じ内容だけど微妙に内容が異なるのが数巻).小説からは声が出て,文章を読み上げてくれる.

エロゲを分解していくと,画集と小説のセット販売と考えることができる.小説目的で買う人もいれば,画集目的で買う人もいる.両方目的の人もいる.

PixivやTwitterなどなどのエロ画像は,一般受けをするような絵が多い.読者を増やすための戦略なので仕方がない.これは,絵師の善意で公開されているので,どういうわけか0円で手に入る.

DLサイトでは24枚ぐらいの画集が500~1000円で売られている.だいたいニッチな層をターゲットにしているので,買う人はやっぱり買っている.700円で12枚ぐらいでも,1000部売れている例もある.

小説は本屋さんに行けば,増税の影響もあって600~800円で1冊手に入る.好みの本を読めばだいたい満足できる.

 

このように分解して他と比較していくと,エロゲは思っているより高い.それ相応のコストが掛かっているからこそその値段になるのは間違いない一方で,購入動機別にユーザが求めているものに対して適切な値段で提供できていない.

エロゲは文化であるので何一つ妥協してはいけないという声もあるかもしれないが,元来のエロゲはコマンドで質問に答えていくとエロ画像が見れるクイズゲーでしかなかった.全てのセリフに声をつけたり,大量の差分があったり,立ち絵が動いたり,妙に複雑なルートがあったりするのは,コンテンツをリッチにしていった結果,今のエロゲのような形態になっただけで,将来的にもっと複雑なコンテンツを作るようになることが予想される.しかも,高くてもたったの1万円でしか提供できない.妥協しないとやっていけないのが現状となっている.

果たしてユーザはそんなにリッチなコンテンツを本当に欲しがっているんだろうか?(古参ユーザは将来的に画面から嫁が飛び出る機能を1万円で提供しろとか言うかも知れないが,少なくとも僕には必要ないし,今までで一番面白いと思ったエロゲはよりによってToHeartだった.コンシューマ版.)

単純に今のコンテンツの形態が,よりニッチな層のユーザしか相手にしていないせいで,買う人がいなくなっているだけなんじゃないだろうか?

 

商品は適切な時期に適切な方法で知らせた上で,適切な値段で適切な内容を提供しないとそもそも売れない.

適切な時期とは,経済状況の時もあれば,ユーザが欲しいと思っている時期かもしれない.Amazon楽天が購買意欲を煽って時期を早めようとしてくる.でも,その人達がよく見る媒体はWeb広告だけとは限らない.ユーザを広げたいのに情報誌で宣伝しても意味がない.もちろん値段も重要で,安ければいい,高いほど利益率が高いとかそんなもんでもなく,戦時中のドイツならじゃがいもの値段は高いかもしれないが,今は平和なので諭吉が紙くずになるような値段で売ってはならない.

ここまできて,ごちうさをよく見るユーザをターゲットにした商品を提供しようというのに,エロ画像が出てきてしまっては意味がない.ごちうさ好きユーザが見たいのは,なんかかわいい少女たちが,特に意味はないけどふわふわした会話をしてて,少女がエンドレスかわいい商品であって,ディープなエロシーンや主人公が男でモテモテとかどうでもいい.エンドコンテンツは死を意味するから,課金か無償でシナリオを無限にアップデートできる商品が欲しい.当然,その辺りはUXに関わってくるので,吉里吉里では作れないシステムになる.じゃあ,宣伝する媒体はアニメ誌を中心に,システムが面白いのでインディ系の媒体でも行ける.などなど.

長いので割愛して,とりあえずエロいの作ったから売ろうとなると,よほどニッチな嗜好をターゲットにしない限り,ユーザになかなか刺さらない.DLサイトでよく見る画集の多くは,ニッチなユーザを相手にしているので,安くてもそこそこの買い手がついてしまう.

どうしてもエロ画像で売りたいのなら,PixivやTwitterで無料で手に入るエロ画像に対して,どのように差別化して,その部分に対してユーザはいくら払ってくれるのか価格を決めなければならない.なので,いきなり物は作ったから,商品を売ろうと思っても,絵のクオリティやニッチな嗜好に応えないかぎりユーザは見向きもしてくれない.

 

そういうわけで,エロ画像で売るならみんなの欲しい画像は概ねPixivなりTwitterなりで書いていると思うので,そこで差別化を図らないかぎり太刀打ちができない.背景の書き込みが綺麗とかちゃんと塗っていたとしても,別にそれは芸術的な観点から絵を見ていなければ,クオリティの評価にしかならない.

エロゲマイスターからすればトータルの綺麗さは重要かもしれないが,DLサイトで700円のそんなに背景書き込んでない画集が売れるのは,別に見ているのは背景じゃないからである.欲しい物がそこに描写されているだけでユーザにとって十分だと考えると,フルプライスは少なくともユーザにとって負担になる.確かに綺麗な絵なのかもしれないが,エロ画像目的であれば,立ち絵が動いたり,声が出たり,感動のシナリオとかどうでもいいのである.その分はコストカットして値段を下げるべきで,商品の売りを見せつつ手にとりやすい価格を維持しないと,ユーザからしてみれば必要のない要素を買わなければならなくなる.

一方で,感動のシナリオをやりたいのなら,演出面の工夫は優先事項かもしれないけど,本当にそこでエロシーンが必要なのか,必要ないならコストカットするべきだし,ルートを何本も分岐させることに意味があるのかどうか考えるべきである.

少なくとも,エロ画像を見せたい,感動シナリオ読ませたい,両方やりたいから高いコストをかけるとなると,投機的な値段設定にしないと成り立たない.おまけに,双方のクオリティが高くないと苦情がついてしまう.

 

なんかうだうだ書いてたら何を書こうと思ったか忘れたので筆を置きます.